| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB1-279
生態的に似た複数の近縁種が共存するには、種間の資源競争と生殖干渉が緩和される必要がある。オオオサムシ亜属(オサムシ科)は、成虫期に多食性の捕食者であるが、幼虫期はミミズ専食である。またオスは異種のメスに対しても交尾行動を示す。彼らは分布域(北海道から九州)の大部分で2-3種(最大5種)が共存しており、同所的に分布する種間では体サイズが異なっている。この種間の体サイズ差は、幼虫期に利用可能な餌(ミミズ)のサイズに応じた資源分割をもたらし、資源競争を緩和するかもしれない。また成虫期に異種間の交尾行動を機械的に妨げる生殖隔離として、生殖干渉を緩和するかもしれない。この2つの仮説を、京都に分布するオオオサムシ亜属4種(山間部の大、中、小型の3種、平野部の大型1種)を用いて検証した。まず資源分割仮説を検証するために、4種の幼虫(1-3齢)に様々なサイズのミミズを与え、餌利用効率(=攻撃率×捕食成功率)を求めた。その結果、すべての幼虫は、ミミズのサイズに関わらず捕食行動を示した(攻撃率=1)。またミミズのサイズ増加に伴う捕食失敗は、中型種と小型種の1齢幼虫期でのみ観察され、2齢以降は4種ともミミズが大きいときでも捕食を失敗しなかった(捕食成功率=1)。従って、2、3齢幼虫期の餌利用効率は、種間で異ならないと推定された。次に生殖隔離仮説を検証するために、4種の成虫で16通りの雌雄ペアを作り、交尾行動(交尾意欲、マウント、交尾器の挿入、精包形成)を観察した。その結果、体サイズ差が大きい異種ペアでは、交尾意欲があっても交尾器が届かず、挿入が出来ないペアが多かった。しかし、体サイズ差が小さい異種ペアでは、大半のペアで交尾器の挿入が行われ、精包形成まで達成するペアも見られた。以上の結果から、オオオサムシ亜属種間の体サイズ差は、資源分割よりも生殖隔離として、共存に貢献していると考えられる。