| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB1-280

乗鞍岳の異なる標高地点におけるハネカクシ科昆虫の季節的発生消長

*淺木宏覚(信大・院),市野隆雄(信大・理)

ハネカクシ科は世界に約46,000種以上を数え、国内でも約2,000種が確認されている大きな分類群である。体サイズは小さく人目にも付きづらい地味な昆虫群であるが、海中と砂漠を除くどんな環境にも分布し、肉食、腐食、菌食などさまざまな食性を持った種が存在している。しかし、その生態的知見は乏しく定量的な群集組成の報告もほとんどない。本研究では日本の森林生態系におけるハネカクシ科の季節的発生消長を食性グループごとで明らかにすることで今後のこのグループの生態的研究を行っていく上での基盤となることを目指した。

北アルプス南部に位置する乗鞍岳(標高3026m)の標高800mと1500mの2地点(いずれも落葉広葉樹林帯)において、5月から10月までの6ヶ月の間にトラップ(M式Fit)を設置しハネカクシの季節的発生消長を調査した。このM式Fit は透明のクリアファイルを切り開いた一枚の板(縦420mm×横597mm)を地表面に立て、そこに飛行中の小甲虫が衝突すると下にあるアルコール溶液中に落下するようになっており、採集された昆虫の5〜7割はハネカクシ科昆虫であった。1標高あたり20基のM式Fitを設置し、それを3日後に回収した。この調査を月の前半と後半の2回ずつ行った。結果、約10,000個体のハネカクシ類が採集された。発表では亜科ごと食性グループごとに季節的発生消長の特徴を明らかにし、また先行研究と比較しながら標高や植生帯と関連付けた考察を行う。


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