| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB1-281
淀川には、いくつかの特徴的な景観がある。その1つはヨシ原で、なかでも鵜殿のヨシ原(高槻市)では1945年頃から毎年、春にヨシ焼きが行われてきた。この過去60年以上にわたる撹乱のため、鵜殿では他のヨシ原とは異なる地表性甲虫群集が形成されていると考えられる。
そこで本研究では、淀川の上流から下流の河川敷で、5ヶ所のヨシ原を調査地点に設定し、2008年4〜12月に地表性甲虫類(オサムシ科、クビボソゴミムシ科)を捕獲し、比較を行った。調査を行った5地点のうち3地点を鵜殿のヨシ原に、2地点を対照区として鵜殿よりも下流にある鳥飼仁和寺大橋付近のヨシ原(摂津市)と城北ワンド群のヨシ原(大阪市)に設定した。この2地点ではヨシ焼きは行われていない。調査には無餌ピットフォールトラップを用いた。トラップの設置期間は1週間とし、これを月2回行った。
調査の結果、5地点全体で2科38種1307個体の地表性甲虫が捕獲された。種数が多かったのは鵜殿の3地点でそれぞれ22、24、22種であった。これに対して対照区の2地点では種数が少なく、それぞれ17、16種であった。鵜殿のみで採集された種はマイマイカブリ、オオホソクビゴミムシをはじめ15種と対照区(鳥飼仁和寺大橋付近3種、城北ワンド群0種)よりも多かった。また、地点毎の種多様度(H’)は、鵜殿の3地点でそれぞれ2.13, 2.19, 2.41であり、対照区の2地点でそれぞれ1.57, 1.96であった。
以上より、鵜殿では対照区よりも種数が多く、種多様度も高かった。また、ヨシ焼きにより鵜殿では独特な地表性甲虫群集が形成されていることが明らかになった。