| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB1-289
『日本のシダ植物図鑑』(日本シダの会)全8巻には,日本に自生するシダ植物の大部分について二次メッシュ(1/25,000の地形図1枚に相当)ごとの分布の有無が記録されている.本書掲載の600種の分布情報をデジタル化して分布パターンの解析を行った.
全4473メッシュのうち,100種以上が出現したメッシュが213個, 150種以上が出現したメッシュが15個あった.全体に温暖で湿潤なメッシュで種の多様性は高かった.とくに目立つ種多様性のホットスポットは伊豆半島南部,南アルプス南部山麓,紀伊半島南東部,背振山地,九州中央部および屋久島などであった.
出現メッシュ数が11以上の418種それぞれについて,気候情報(気温・降水量・積雪深など)地形情報(標高,海岸からの距離,本土四島からの距離など)から各メッシュごとの分布確率を求める一般化線形モデルを作成した.各メッシュごとに,このモデルで求めた各種の分布確率足しあわせると,そのメッシュに出現する種数の期待値が得られる.これを実際に分布している種数と比べたところ,種多様性のホットスポットでは期待値以上に多くの種が分布していた.
上記の418種の分布と,出現メッシュ数が10以下の希少種の分布との対応を調べたところ,意外なことに両者のあいだには明確な関係はなく,普通種が多いからといって希少種が多いとは限らないという結果が得られた.これは,種多様性のホットスポットが希少種のホットスポットであるとは限らないということである.
各メッシュに出現する種数と,それらの属および科の数との関係を調べた.種数の増加とともに属および科の数が増加する様子は,種間でなんら共起的ないしは排他的な関係がないと仮定した場合と比べて特に違いが認められなかった.高次分類群レベルで異なる種は共存しやすいといった傾向の裏付けは得られなかった.