| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB2-645
雌雄異株植物では、繁殖投資は雄より雌で大きいため、雌の成長投資は雄よりも小さいとする報告が多数ある。だが、繁殖と成長への投資における雌雄差は生育環境やサイズによって変わるとする研究も少なくない。ヤマウルシは林外から林内の幅広い光環境に生育する雌雄異株性樹木であるが、本種における繁殖と成長への投資の雌雄差は、光条件に対してどのように変わるのだろうか。このことを知るため、サイズにも注目し、異なる光条件下での繁殖行動と成長を雌雄間で比較解析した。
京大フィールド研・芦生研究林において、ヤマウルシを対象に、樹高、性別及び光条件を調べ、光条件を三段階に分けた。各光条件階から合計80個体選び、うち24個体から当年枝を数本ずつ採取し、当年枝あたり繁殖投資量を調べた。残る56個体から個体あたり当年枝数、繁殖枝数、繁殖枝率、断面積成長量を数年間調べた。
個体あたり繁殖枝数は、雌よりも雄で大きく、樹高と光それぞれに対して正の相関を示した。また、光と性別は繁殖枝率に影響し、樹高は当年枝数に影響していたことから、個体の資源配分パターンには、光と性別が関与していることが示された。さらに、断面積成長率は光に伴って増加していたが雌雄差を示さなかった。これらの結果は、繁殖と成長への投資は光に依存して増減するものの、雌雄差は変わっていないことを示唆していた。一方、どの光条件でも2005年の雌の個体あたり繁殖投資量は雄の2倍ほど大きいと推定されたが、雌の7年間の平均繁殖枝率は雄の1/2ほどであったことから、長期間で見た繁殖投資の雌雄差は抑制されていることが示された。したがって、ヤマウルシの雌は長期間にわたる繁殖投資の調節によって、どの光条件でも雄と同等の成長を維持している可能性が示された。