| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB2-646
植生の多様性や密度が制限される土壌性の高ストレス環境では、繁殖システムの多型が維持されている可能性がある。この可能性を、蛇紋岩地帯の崩壊地でパイオニア種として生活するジンリョウユリを用いて検証した。ジンリョウユリはササユリと変種関係で区別される。ササユリはスズメガ媒花である。またジンリョウユリとササユリは自家和合性である。
徳島県の自生地で、デジタルカメラによるインターバル撮影と目視により、開花から閉花までのフェノロジーと訪花昆虫相の観察、花形質の測定を行なった。
ジンリョウユリの柱頭と葯間の長さは、長い型と短い型の二峰型の分布を示した。また柱頭と葯間が短いほど開花一日目に受粉しやすい傾向があった。さらに近縁種のササユリは夜咲きでスズメガ媒花であるが、ジンリョウユリの訪花昆虫はマルハナバチとハキリバチ、スズメガと小型のガ類だった。ハナバチ類の訪花が多い開花中期の昼間に受粉率が高いが、他の時期や夜間にも受粉された。また開花開始は昼間の場合と夜間の場合があったが、一日の花の香りの強度は19時から20時に最も高かった。
以上の結果から、ジンリョウユリは部分的に自殖する性質を持つ一方で、ハナバチ媒・スズメガ媒の両方に適応した花形質を持っていると考えられる。