| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB2-654
互いに近縁なユリ科の一回繁殖型多年草ウバユリとオオウバユリは、本州中部付近で分布を異にしており、北方に生育するオオウバユリは南方に生育するウバユリよりも大型である。両種は個体サイズ以外には形態的な差異が認められない。
本研究では、ウバユリとオオウバユリの個体サイズの違いが、種子や実生の段階から発現しているのかを確かめるために、両種の種子を同一条件下でシャーレに播種して発芽特性を比較した。供試種子は栃木県日光市と福島県檜枝岐村の典型的なウバユリとオオウバユリの個体群から採取した。両個体群において開花個体の花茎高には約1mの差が見られた。発芽した実生は同一環境下で育成し、地上部の枯死時期を記録した。当年実生の葉の展開が終了した後、葉身面積を測定した。
採取した種子の一粒あたりの重量(胚と胚乳部分のみ)および、当年実生の葉身面積はウバユリの方がオオウバユリよりも大きかった。そのため、発芽試験に用いた2個体群間では開花個体サイズと種子・実生のサイズが逆転していた。この傾向の一般性を確かめるため、茨城県から新潟県にかけて本州を横断して48個体群を踏査し、花茎高と種子一粒あたりの重量の関係を調べた。広範なスケールで見ると、開花サイズと種子サイズの間に有意な相関は見られなかった。これらのことから、両種の開花個体サイズの違いは、発生初期の段階で遺伝的に決まっているものではないと考えられた。
種子発芽のタイミングは、種子サイズの影響を考慮してもウバユリよりオオウバユリの方が遅かった。オオウバユリでは当年実生の地上部枯死時期も早かったため、1年目の地上部生育期間がウバユリよりも短縮されていた。両種間には発達初期から生育スケジュールの分化が生じていることが示唆された。