| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB2-659
ハンノキ(Alnus japonica)は高木種であるが湿原では樹高が低い個体が多い。このような個体は萌芽更新していると考えられているが、その更新や成長に関する報告は非常に少ない。この点を明らかにする目的で本研究を行った。
釧路湿原南東部の、中栄養湿原の泥炭土上に生育する樹高2m以下のハンノキ92個体を樹高測定後サンプリングし、外部形態と材の中心部の組織の状態を手がかりに、幹と根の境界部を特定した。その部位の横断切片を作成し生物顕微鏡下で年輪数を数え、それを個体の齢とみなした。また個体ごとに最も高い幹を主幹とみなし、その基部に枯れた幹あるいはその痕跡がある場合は主幹基部の年輪数も数え、主幹の齢とみなした。これらの情報をもとに、樹高と齢との関係を一般化線形モデルを用いて調べた。
多くの個体では基部に枯れた幹あるいはその痕跡を有していた。主幹の齢は個体よりも小さく、緩やかな一山型の分布をなしていた。個体と主幹の齢の間に有意な相関はなかった。すなわち多くの個体で主幹が交代しており、それは個体の齢とは関係なく起こっていた。樹高を応答変数とし個体と主幹の齢を予測変数としたモデルでは、個体と主幹共に齢と樹高との間に正の関係があった。主幹については齢の増加に伴い樹高の増加が小さくなる傾向があったが、個体ではそのような傾向は顕著ではなかった。このモデルはハンノキが幹を交代させながら時間の経過と共に樹高を増加させていることを示唆した。