| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB2-665
雄性両性異株は、雄株と両性花株から構成される性型であり、この性型を示すことが報告されている生物は非常に少なく、被子植物では50種ほどでこの性型を示すことが報告されている。この性型の進化・維持機構については、雄株の著しく高い繁殖成功度を保証する要因として、高い外交配率、強い近交弱勢という交配様式に関わる要因や性型間での異なる空間構造・遺伝構造という生態学的要因が関与しているのと指摘されているが、どの要因がこの希な性表現の維持に関与しているのか野外植物を扱って明らかにした研究例は少ない。本研究では雄性両性異株性を示す亜高木樹種マルバアオダモ(モクセイ科)を用い、雄株が花粉親として高い繁殖成功度を持つかどうかを雄株花粉と両性株花粉の発芽率、花粉管伸長の比較により検証した。調査は、大阪府柏原市の二次林で行った。2007年4月・2008年4月に、調査株に除雄処理を施した後、袋がけを行い、各花序に雄株花粉、他家花粉、自家花粉を花粉銃によって一定量吹きつけ、受粉させた。処理後、6・9・12・24時間後に10〜20花を回収し、固定・アニリンブルー染色を行い、蛍光顕微鏡下で花粉の発芽、花粉管の伸張の観察を行った。その結果、雄株花粉の発芽率は両性花花粉よりも有意に高いことが明らかになった。又、9時間後には両性花株でも雄株でも両性花花粉でも胚珠まで到達している花粉が観察されたことから、発芽したのちはどの性型も胚珠まで9時間後には十分到達しうることが示された。このことは人工授粉実験での結実率に性型間で差異が無いことを説明できる。一方、混合花粉受粉実験の父系解析から雄株の高い繁殖成功が示されており、雄の受粉競争能力の高さにはその高い花粉発芽率が大きく関与していることが示された。これらのことから、マルバアオダモにおける雄性両性異株の維持機構についての議論をおこなう。