| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PC1-378
特定の環境で生じた派生morphの個体が、同一の地域集団内で元来のmorphの個体と共存するのが観察されることがある。そのような場合、派生morphは固有morphとの対比として興味が注がれ、その出現条件や適応性が研究される。派生morph個体が他の個体と密接に相互作用する多型集団では、派生morphの出現は、個体間相互作用を修飾し、その他の個体に派生環境をもたらす。このような場合、集団内多型は、その派生morph個体に対して、他の個体が対抗する他の派生morphを生じさせることで維持されていると考えられる。
エゾサンショウウオ(Hynobius retardatus)幼生の集団は、同種幼生が高密度な環境で個体発生を進めると、顎が発達した、丸呑みによる共食いに優れた攻撃morphの個体が出現し、二型となる。同種幼生が低密度な環境では、攻撃morphは出現せず、単型となる。低密度な環境での固有morphに対し、高密度な環境で攻撃morphでない個体が、共食いに対抗する防御morphを派生していることが分かった。防御morphは顎関節部の頭幅の拡大と背鰭起点の突出に特徴付けられた。その形態的特徴は、直接、丸呑みの妨げとなることで共食いに対する防御として機能するものであった。エゾサンショウウオ幼生の高密度な環境での二型は、強い個体間相互作用により派生した、対抗的に機能する二つのmorphによって維持されているのである。