| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PC1-379
生物個体は様々な非生物・生物環境に対して適応的な表現型可塑性を示すことが知られている。表現型可塑性の進化・維持機構を理解する上で、可塑性を示す形質の遺伝性を明らかにすることは必要不可欠である。しかし、従来の有性生殖を行う生物を用いた研究では、煩雑な操作実験が必要となるためその検証が困難であった。本研究では単為生殖を行うアブラムシを用いることで可塑性の遺伝的変異を明らかにした。
材料としたササコナフキツノアブラムシは、捕食者からコロニーを防衛する機能を持つ「兵隊」と呼ばれる不妊のカストを産出する真社会性のアブラムシである。この兵隊カストは、自身のツノと前脚を用いて捕食者を撃退することが知られている。これまでこれらの防衛形態形質は季節的な可塑性を示すこと、また野外集団の兵隊カスト個体の防衛形態形質サイズが地域個体群ごとに異なっていることがわかっている。そこで本研究では遺伝的背景の異なる3つのアブラムシ集団から得られたアブラムシ個体を同一の野外環境下に移植し、母性効果を排除した後に産出される兵隊カストの防衛形態形質サイズに地域間変異が存在するかを調べた。その結果、兵隊カストの防衛形態形質サイズの季節的な可塑的変動性には地域間で大きな違いが見られ、可塑的形質の遺伝的変異が検出された。