| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC1-413

ミジンコ(Daphnia)2種の温度勾配分布と消費型競争への温度影響

松田智幸,*占部城太郎,八神遥介(東北大学生命科学)

Daphnia(ミジンコ属)は湖沼の代表的なプランクトンであり、我が国には数種が分布している。このうち、D. dentifera (D. rosea s.l.)とD. galeataはともに東アジアから北米大陸にかけて広く分布している近縁種である。我々が日本各地の湖沼を網羅的に調査したところ、両種ともに本州から北海道にかけて分布するが、同所的(同じ湖沼)に分布することは極めて希であり、前者は特に高緯度・高標高の湖沼に、後者は低緯度・低標高の湖沼に分布することが判った。両種とも休眠卵を造ることにより広範囲に移動分散する能力があることから、D. dentiferaD. galeataの緯度・標高に沿ったこのような側所的分布パターンは、温度勾配に沿って競争の優位性が両種の間で逆転することにより生じているのかも知れない。本研究では、この可能性を調べるため、緯度・標高の異なる複数の地域からそれぞれ採取したD. dentiferaD. galeataのクローンを用い、消費型競争の優位性を指標する閾値餌密度(TFC:個体の生存に必要な最低餌密度)と飢餓耐久時間(餌無しで死亡に至る日数)を12℃と24℃で測定した。その結果、種にかかわらずTFCと飢餓耐久時間はクローン間でばらつき、12℃でもまた24℃でも有意な種間差は検出されなかった。ただし、TFCについては12℃のときにD. dentiferaで低くなる傾向がみられた。これら結果は、高緯度・高標高の湖沼でのD. dentiferaの卓越はその競争的優位性による可能性があるが、低緯度・低標高の湖沼でのD. galeataの卓越は競争的優位性では説明出来ないことを示している。


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