| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PC1-419
チャマダラセセリは絶滅危惧I類にランクされる草原性の種である。北上山地の半自然草原の多くは、放牧、採草等の人為的干渉によって維持されてきたが、近年、人工草地への転換や畜産的土地利用の減少によって激減した。ウシの放牧が草原性チョウ類に与える影響を明らかにするため、放牧を7年間休止した後、再放牧を行っている半自然草原で禁牧柵を用いた野外操作実験を行い、ウシの採餌行動がチャマダラセセリの生存に及ぼす影響について調べた。今回は子供の生存率を明らかにするため、5月〜9月に草原内で卵および幼虫の巣をマークし、1〜2週間間隔で各個体の生死を確認した。その際、卵または幼虫の死体が確認できたものを「死亡」、幼虫の死体が見つからず、巣が空になっていたものを「消失」として扱った。その結果、幼虫の生存率は3齢以降、ウシが自由に歩行・採餌できる「放牧区」の方が、ウシの進入を阻止した「禁牧区」より低くなっていた。死亡要因のうち、天敵として、卵寄生蜂が1種、幼虫寄生蜂が2種(日本未記録種)見つかった。死亡ではウシによる巣(幼虫)の採餌や踏みつぶし等、直接的な「ウシの撹乱」によるものは2〜3%と比較的少なかったが、消失では幼虫が見つからなくなった時に巣の周囲に撹乱の痕跡を伴っていたケースがほぼ半分を占めていた。最終的に蛹化間近の晩夏まで生存できたのは、禁牧区で9〜11%だったのに対し、放牧区では3〜5%で、ウシによる撹乱は幼虫の生存率を低下させると考えた。