| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PC2-798
湿地の減少や水田耕作の近代化により、かつての水田雑草種も含め、多くの湿地性植物が絶滅危惧植物となっている。一方近年、減反政策や農業人口の減少に伴い、水田耕作放棄地が増加している。水田の多くは元々湿地が成立しやすい立地条件にあるため、耕作放棄後は湿地性植物の生育場所として機能している可能性があるが、その実態は十分には明らかにされていない。
本研究では、茨城県北浦東岸の谷津の水源部付近(谷津奥部)にある32箇所の水田耕作放棄地を対象に、植生の特徴を評価し、それに対する地下水位、耕作放棄後の年数、光条件の影響を検討した。
植生調査により、合計244種が確認され、そのうち外来種は25種であった。在来種のうち湿生植物は97種で、そのうち58種は水田雑草として文献記載のある種であった。また全国版・地方版のRDB記載種は9種確認された。
一般化線形モデルによる分析から、在来湿生植物種数には、地下水位の有意な正の効果、放棄年数・光条件の有意な負の効果が認められた。地下水位による正の効果は、水田雑草種の種数およびRDB種の有無にも示された。これらとは逆に、侵略的外来種であるセイタカアワダチソウの重要度(調査地内の39コドラートでの出現頻度)には、地下水位・放棄年数の有意な負の効果、光条件の有意な正の効果が認められた。さらに地下水位に影響する要因を分析したところ、人工的な排水施設の有無による有意な効果が示された。
以上から、谷津奥部の水田耕作放棄地のうち地下水位が高い場所では、絶滅危惧種を含む多様な湿地性植物が生育していることが分かった。一方、排水施設が設置されてから耕作放棄された場所では、地下水位が低く、侵略的外来種のセイタカアワダチソウの優占度が高くなることが示唆された。