| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PC2-799
農村地域の生物多様性保全機能が注目されているが,農法の違いが生物相に与える影響について得られている情報はいまだ少ない.そこで,千葉県南房総市において,水田雑草群落の組成に農法の違いが与える影響を明らかにすることを目的に研究をおこなった.
野外調査は2008年9月から11月にかけておこなった.稲刈り後の水田面において,2m×2mのコドラートを3から10設置し,出現した植物の種名と被度,植被率,稲刈りの際発生するワラの被覆度を記録した.聞き取り調査を行い,管理方法の履歴などを把握した.調査した水田は,慣行農法(除草剤1回使用,空中散布あり,不明を含む)の水田6枚,減農薬栽培(除草剤1回使用)4枚,除草剤使用なし(合鴨農法)5枚の計15枚で,管理者は8人,水田の場所は3地区にまたがった.
出現種数は,除草剤使用なしの水田で高くなり,そこではマツバイ,ヤナギタデ,タウコギといった湿性の種が特徴的に認められた.減農薬の水田では固有のまとまりを持った種群は認められず,種組成には場所の特性が影響しているようであった.常在度階級値を用いてDCA法により各水田の序列化をおこなった結果,農法の違いではなく,管理者の違いによってゆるやかなまとまりがみられた.地区の違いは明確な違いは認められなかった.慣行農法で,水稲栽培を大規模農家に任せている水田においては,セイタカアワダチソウ,ヒロハフウリンホオズキといった外来種や,コゴメガヤツリ,エノキグサといった畑地・路傍に見られる種が出現した.大規模農家は栽培管理時に使用する大型機械を遠方から運ぶこと,その機械は様々な環境で使用されていることから,水田環境に生育する種以外の種子が運ばれやすいのではないかと考えられた.
今後調査水田数を増やし,管理者,地区,農法の独立性を考慮しながら,研究を進めて行く必要がある.