| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PC2-800
越後平野に広がる国内最大の大水田地帯は、 信濃川と阿賀野川の大氾濫原に強力な排水設備を設置して造成されたものである。しかし現在では、その約3割が休耕田として維持されている。本研究では、そのような休耕田において、 耕作放棄後の年数と物理的環境が植物種組成に与える影響を明らかにする。
調査は新潟県越後平野の20地域、70枚の休耕田で行った。各地域における休耕田の調査枚数は3〜4枚である。 各休耕田の中央に20mの調査ベルトを設置し、 連続する20個の1m×1mの調査枠に分割した。 調査した枠の総数は1400個である。これら各調査枠に出現した植物の種名を記録し、各調査ベルトの両端と中央で、5cmと12cmの深さの土壌水分を測定した。さらに、休耕田に隣接する土地利用(水田・畑・構造物など)を記録するとともに、各休耕田の放棄年数を明らかにするため、 所有者や周辺住民に聞き込みを行った。
その結果、休耕田全体で198種の植物が確認された。最も少ない休耕田では9種、多い休耕田では48種であった。生活型では、1年草85種、多年草73種、越年草32種であった。湿生の植物は65種、湿生以外の植物は123種であった。また、日本で絶滅危惧種に指定されているアブノメ、ヒメミソハギ、マルバノサワトウガラシ、ミズマツバ、ミズワラビが確認された。これらの植物は休耕後1年以内の水田に有意に多く出現した。休耕田1枚あたりに出現した植物の種数は地域間では違わなかった。一方、休耕田1枚あたりに出現した湿生植物種数と土壌水分との間には、有意な正の相関があった。これらの結果をもとに放棄年数と環境要因が休耕田の植物種組成に与える影響を明らかにし、休耕田で絶滅危惧種を維持するための管理方法について検討する。