| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PC2-801
セキショウモ属はロゼット型の沈水植物で茎を伸長させないため、透明度の低下による影響を受けやすいと考えられる。現在、琵琶湖にはネジレモ(Vallisneria asiatica v. biwaensis )とコウガイモ(V. denseserrulata)の2種のセキショウモ属が生育し、これらを研究対象とした。琵琶湖におけるネジレモとコウガイモの優先順位は、1953年当時ではそれぞれ1位と3位であった(生嶋ら 1962)が、2002年ではそれぞれ10位と8位に低下していた(水資源機構 2006)。これらのロゼット型沈水植物が減少した原因は、透明度の低下によると考えられる。また、現在の琵琶湖において、ネジレモは主に底質が砂質の浅水域に生育しているのに対して、コウガイモはネジレモより深い水域で底質が泥質なところに生育している。しかし、ネジレモとコウガイモの生育特性を比較研究した例は少ない。
そこで本研究では、ネジレモとコウガイモの減少や分布の違いを説明するため、琵琶湖・淀川水質保全機構の屋外人工水路(幅2 m、長さ24 m、深さ0.9 m、葉山川の水を使用)において、6段階の照度条件(相対照度5 ,10 ,15 ,25 ,40 ,80 %)と底質条件(砂・泥)で栽培実験を行った。実験は7月〜10月の約4ヶ月間で、地上部と地下部の現存量の変化等を調べた。
現存量で比較するとネジレモは80 %区で、コウガイモは40 %区で最も高い値を示した。また、ネジレモは10 %区と5 %区で全て枯死し、コウガイモは5 %区でも生残し、新しい殖芽を形成する個体も見られた。これらの点からも、ネジレモはコウガイモより光条件の悪化に弱いと考えられるが、他に地下部の再生産器官の生産量なども含めて議論する。