| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PC2-802
砂礫河原には周辺の環境には見られない河原固有の植物が生育するが,近年は絶滅が危惧されていて,洪水による攪乱頻度の減少と,外来種の侵入が原因に挙げられている.問題となっている外来植物には緑化植物シナダレスズメガヤなどの意図的導入種も多く,導入前のリスク評価が必要である.砂礫地は貧栄養で乾燥するため、生態特性として特に耐乾性と耐貧栄養性を明らかにすることで,種の持つ生態特性から砂礫地への侵入可能性を予測することを試みた.
調査地は神奈川県厚木市と座間市の境を流れる相模川である.河原の内外には多様なハビタットが存在するため,まず植生調査でハビタットを区分してから,そこに特徴的に出現する種の生態特性を解析した.TWINSPANを用いた種組成の解析によって砂礫河原下部(水際),砂礫河原上部(シナダレスズメガヤ,カワラサイコなど砂礫河原固有種が多い),草原・堤防土手,耕地周辺,の4ハビタットに区分された.各ハビタットへの出現確率のオッズ比を用いて特徴的に出現する種群を特定し,乾燥耐性(δ13C,葉の蒸散速度と相対水分量)と貧栄養耐性(C/N比,窒素固定能),r戦略性(寿命),生育型(地下茎での拡大,草本・木本,つる性、ロゼット性)との対応を解析した.
ロジスティック回帰分析では,河原固有種が多い砂礫河原上部に出現する種はC/N比が大きく(窒素固定能によって閾値が変わる),貧栄養耐性がカギとなっており,水分生理特性は重要でなかった.他のハビタットでは特徴的な生態特性は明瞭でなかった.
外来植物の導入前リスク評価では耐貧栄養性を用いることが推奨される.また生育環境を保全するためには洪水などの物理性だけでなく,河川水のN濃度を下げる化学性の改善も必要なことを示唆する.