| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PC2-809
氾濫原低湿地に生育する希少植物の一部には埋土種子集団を形成するものがあるが,埋土種子は一般的に空間的に不均一である場合が多く,氾濫原内のどこでこうした種子が多く得られるのかは不明である。そこで本研究では,現在でも希少植物が比較的多く生育する小貝川氾濫原にて調査を行い,埋土種子の空間分布特性と植生・環境条件とを関連づけることで,埋土種子の空間分布を規定する要因の特定を試みた。2007年9月に小貝川氾濫原(下妻市高道祖地先)において,河道と直行する方向にトランセクトを約50m間隔で5本設置し,トランセクト上5mおきに埋土種子ならびに土壌・植生用の調査地点を92箇所設けた。調査地点ごとに採取した土壌サンプルを育苗トレイに撒きだし、種子を発芽させることで種の同定,各植物種の埋土種子の密度を明らかにした。
撒き出し実験の結果,86種,4692個の種子が含まれていることが判明した。この中で国のRDB掲載種であったのは,カワヂシャ,タコノアシ,ミゾコウジュの3種であった。これらは現地の地上部植生の調査では確認されなかった種である。カワヂシャ,タコノアシの埋土種子については分布が局所的でそれぞれ10地点14個,4地点4個しか見つからなかったが,ミゾコウジュは33地点,323個の種子が見つかった。ミゾコウジュは河岸から離れたオギもしくはタチヤナギ・アカメヤナギが優占する地点に多く,河岸から離れていてもヨシやカサスゲが優占する場所ではほとんど含まれなかった。河川地形学的要因,出水時の種子堆積環境に関する要因,種子保存条件に関する要因,現存植生の種組成によってミゾコウジュの埋土種子量が規定されると仮説立てて構築したパスモデルに実際のデータを当てはめたところ,ミゾコウジュの埋土種子数を規定する要因としては本流水際からの水平距離が相対的に重要であることが判明した。