| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-810

野辺山高原におけるサクラソウ湿生群落におよぼす刈り取り処理の影響

*佐野恭子(信大院・農学研究科),大窪久美子(信大・農)

信州大学農学部AFC野辺山ステーションにはズミ林の林床にサクラソウやサクラスミレ,アサマフウロ等の希少植物を含む湿生植物群落が自生しており,地域の在来群落として希少である。本研究では本群落の植生管理を検討するため,刈り取り処理の影響を考察することを目的とした。2004年に2m×2mの方形区を36プロット設定し,2007年と2008年の7月に植生調査と立地環境調査(土壌含水率と相対光量子密度:各プロットでランダム9点)を行った。全4群落型(A,B,C,D:2007年結果)においては全面刈り取り区と無処理区を,サクラソウの優占度が高いAとC群落型では木本類のみを刈り取る選択刈り取り区を設けた。処理は2007年9月に行った。サクラソウのシュート数及び積算優占度は両刈り取り区で増加し,その傾向は全面刈りで大きかった。サクラスミレの優占度は選択刈り区で増加傾向だったが,アサマフウロはB,C群落型の刈取り区で減少した。クロツバラ等の低木類である微小地上植物(N)の割合は全刈取り区で減少し,特に全面刈りで大きかった。キツリフネやツリフネソウ,メマツヨイグサ等で構成される一,二年生植物(Th)の割合は全刈取り区で増加し,特にD群落型で大きかった。土壌含水率はA,B,C,D群落型の順に高く,処理前と序列に変化はなかったが,AとB群落型で増加傾向で,DとC群落型では低下した。相対光量子密度は両刈り取り区で増加し,全面刈り区でより高かった。遷移度は全刈取り区で低下し, C群落型の無処理区では有意に増加した(t検定,p<0.05)。刈り取りによって低木類の優占度は減少し,相対光量子密度は増加し,サクラソウの優占度は増加したが,同時に外来種を含むThの増加やアサマフウロの減少が指摘された。


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