| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-815

地理的・地域的スケールの隔離によるケショウヤナギの遺伝的多様性の減少と遺伝的構造化

*長田光司(名大院生命農),永光輝義(森林総研北海道),鈴木節子,戸丸信弘(名大院生命農)

植物集団の断片化は集団の空間的な分布パターンを変化させ、集団サイズと集団間の遺伝的交流を減少させる。この結果、遺伝的浮動や近親交配による集団内の遺伝的多様性の減少や集団間の遺伝的分化が進行し、集団の存続に影響を与える。植物集団の保全を考えるうえで、このような断片化や小集団化の影響を明らかにすることが重要である。本研究では河畔林先駆樹種のケショウヤナギを対象に、地理的・地域的スケールでの隔離と集団サイズの大小が集団の遺伝的側面に与える影響を調べた。

国内の大分布域(北海道)と小分布域(長野)において、それぞれ大集団(札内川;上高地)と小集団(帯広川;安曇野)の計4集団を対象として、核SSR10-13座を用いて遺伝的多様性(ARHE)と遺伝的分化(FST、類似図)を評価した。また、孤立した長野2集団の27局所集団を対象に、STRUCTURE解析によって詳細な遺伝的構造を明らかにした。

地理的スケールでは、北海道から長野で大幅な遺伝的多様性の減少が認められた(AR=7.2→2.8、HE=0.679→0.289)。大集団と小集団の比較では北海道で同程度であったのに対して長野では遺伝的多様性が減少し、有効集団サイズと対応していた。また、北海道より長野で遺伝的分化が大きかった(FST=0.048;0.265)。地域的スケールでは、長野に4クラスターが存在し、上高地と安曇野で全く異なるクラスター分布を示した。また、上高地と比較して安曇野で強いクラスター構造が認められた。これらの結果から、小集団にとって遺伝的交流の程度が遺伝的多様性の維持に重要な役割を持ち、局所集団間の連結性の減少が集団の遺伝的構造化を強めることが示された。


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