| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-818

ギフチョウ属混棲地における食草2種の分布と生育環境

*佐藤衣里,林田光祐(山形大・農)

ギフチョウ・ヒメギフチョウは、近年の里山環境の破壊や悪化によりその数を減らしていると言われており、環境省RDBに掲載されるほど希少な種となった。両種の分布域が重なる新潟、群馬、山形県などの限られた地域には両種の混棲地が存在する。混棲地におけるギフチョウ属2種の生態や最適な生息環境を明確にすることを目的として、本研究では、ギフチョウ属の生息環境の中でも産卵・幼虫に必要不可欠な食草に注目し、食草2種の分布と生育環境を調べ、両種に違いがあるのかを検討した。

混棲地のひとつである山形県鮭川村において、分布する食草3種のうちギフチョウ属2種が主に利用しているウスバサイシンとコシノカンアオイを調査対象とした。自然環境保全基礎調査に用いられる基準地域メッシュ(1km)を使用して、鮭川村全域で分布調査を行った。また、全域に100m2調査区を533ヶ所設置して、食草2種の有無と調査区の環境(標高、斜面方位、林相、低木層と林床植生の疎密)を記録した。

調査した97メッシュ中、ウスバサイシンは46メッシュで全域に広く分布していたのに対し、コシノカンアオイは10メッシュと少なく西側やや中央部よりの地域に限定して生育していた。ウスバサイシンは林床植生が疎の場所に偏って生育する傾向が見られたが、コシノカンアオイは特徴のある傾向は見られなかった。さらに、両種の分布が重なる地域に限定して、食草が生育する調査区を追加した合計55ヶ所のうち、両種が混生した調査区は3ヶ所のみであった。両種の生育環境の違いを比較したところ、いずれの生育環境にも差が認められなかった。以上のことから、ウスバサイシンは林床植生に影響されやすいと考えられるが、コシノカンアオイの生育を制限する要因は明らかにならなかった。


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