| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PC2-837
霧ケ峰高原の半自然草原は亜高山帯に成立し,現在も大規模な面積を有する希少な在来群落である。しかし本地域においても草原の生産的機能は既に失われており,管理が停止された結果,これらの面積の減少や遷移進行が問題となっている。また1960年代にはじまった開発等により,1970年代にはすでに外来植物の侵入,定着が報告され(土田ら,1975),現在もこれらの在来群落への影響が懸念される。そこで本研究の目的は,霧ケ峰高原における外来植物の侵入,定着状況を分布調査および群落構造から把握し,これらの抑制方法および在来草原植生の復元方法について考察することとした。
霧ケ峰で特に優占する外来種のヒメジョオン類とアレチマツヨイグサ類が分布する強清水(約標高1680m)において群落調査を2008年9月に実施した。各プロットは2m×2mとし,中心の1m×1mで調査を行った。群落調査は計18プロットにおいて,出現種名および被度,群度,自然高を記録,測定した。同時に立地環境調査は土壌含水率と相対光量子密度を測定した。外来植物の分布調査は同年12月初旬にヒメジョオン類とアレチマツヨイグサ類を対象に強清水を中心に行い,携帯型GPSを用いて110地点で測位を行い,両種の優占度を6段階で評価し,記録した。
群落調査の結果,群落内での外来種2種の優占度は高かった。分布調査の結果,1974年に実施されたヒメジョオン類のデータ(土田ら,1975)から,34年経過しても強清水における分布範囲に大きな変化はなく,長期にわたる本種の定着が確認された。当日の発表では群落構造と立地環境条件との関係について詳しく議論する。なお,本研究は霧ケ峰自然環境保全協議会(平成20年度内閣官房内閣府・地方の元気再生事業)からの委託調査の一部である。