| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PC2-838
浅海域は海洋における生物生産を支える場所であるとともに、干潟や藻場といった様々な生息場所から成り立ち、それぞれが重要な機能をはたしている。なかでも河口域に発達する干潟には、内湾の富栄養化を抑制する水質浄化の場としての機能が期待されるが、高度経済成長期以降、沿岸の開発によってその多くが失われた。1970年代に入って国土の改変がもたらす自然環境の劣化が危惧されるようになり、沿岸域についても基礎調査が行われるようになった。また近年では、人工衛星を利用した広範囲のモニタリングも行われている。しかし、詳細な調査が行われた1970年代後半には、日本沿岸の干潟面積はすでに1945年の65%程度まで減少しており、重大な変化はそれまでに終了しているとも考えられる。地図や聞き取りからでは干潟の定量的な把握はできず、過去に遡った調査を行う唯一の手段は航空写真である。そこで、1946年に占領軍が撮影した航空写真、及び1977、1992、2003年に鹿児島県水産試験場が藻場調査のために撮影した航空写真から、鹿児島湾奥の干潟の分布変化を追跡した。その結果、1970年代後半にすでに干潟の多くを失っていた東京湾や伊勢湾とは対照的に、鹿児島湾で著しく干潟面積が減少したのは1992年以降であった。湾奥全体の干潟面積は1977年から2003年まで減少し続けたが、その変化パターンは干潟によって異なっており、1992年までは面積が増加した干潟やほとんど変化しない干潟があった。埋め立てによる干潟の消失は少なく、各干潟の面積や形状の変化は、主に河川からの堆積物の流入と波による消失のバランスで決まっていると考えられる。講演では、干潟の面積変化だけでなく、底質環境や底生動物相といった干潟の内部でおこっている変化についても一部の干潟について報告する予定である。