| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-843

キタダケソウの移動速度の推定に関する研究

名取俊樹(国立環境研究所 生物)

はじめに キタダケソウは北岳(3,193m 山梨県)のみに生育する固有種であり、その生育地も含めて、いわゆる種の保存法により保護対象となっている。キタダケソウのひとつの花茎について、現地で観察する限り、結実する種子数は多くとも十数個であり、10個程度の場合が多い。また、種子重は約15mg(50個の平均生重)と比較的重く、形状は丸い。夏季、生育地保護区内では、サルやライチョウなどが高山植物を食べている場面が観察されるが、キタダケソウの種子散布に寄与していることは確認されていない。花茎は、開花後徐々に伸び始め、結実後期には開花直後のほぼ倍の20〜30cm程度にまで伸び倒伏する。これらの観察から、キタダケソウは重力散布が主であり、種子散布能は極めて小さく、種子散布によるキタダケソウの移動距離は20〜30cm程度と推定した。

方法 この推定を確かめるため、生育地保護区内でのキタダケソウの生育地のひとつである北岳山荘に最も近い生育地で、不動点とした岩から1本の基準スケールを設置し、それをもとに、それぞれのキタダケソウ個体の位置の座標付けを行った。その結果からそれぞれの個体毎に、その近傍個体までの距離と方向を求めた。そしてキタダケソウの移動速度を推定したので、その結果を報告する。


日本生態学会