| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PC2-844
里山は田畑耕作やコナラ二次林の伐採利用などの伝統的農耕手法によって、長い間人為的な中規模攪乱が断続的に課せられている地域であり、そこに生育する植物は、種子発芽の時期や場所を何らかの方法により選択することによって生きのびてきたと想定される。本研究では、群馬県の通称・西榛名の里山地域に生育する在来植物・希少植物の種子発芽の温度特性を解明することを目的として、15種の植物について発芽実験を行った。各種子を2カ月または3カ月間、4℃で冷湿処理を行い、その後10/6、17/8、20/10、25/13、30/15℃の5段階(昼/夜、14L/10D)の温度レジーム下で約2カ月間培養した。最終発芽率は、冷湿処理を3カ月施した種子の方が全体的に高くなった。最終発芽率と温度レジームの関係は、大別すると5つのタイプに分けることができた。すなわち、TYPE I (イトイヌノヒゲ、ダイコンソウ):全温度レジームにおいて100%近くが発芽、TYPE II(カラハナソウ、ナガミノツルキケマン、キバナアキギリ):全温度レジームにおいて10%-30%程度が発芽、TYPE III(タウコギ、アブラガヤ、イヌビエ、サクラソウ、フシグロセンノウ):10/8℃ではあまり発芽せず、より高温のレジームでより多くの種子が発芽する)、TYPE IV(アキノウナギツカミ):低温のレジームほど発芽率が高い、TYPE V(ヒロハヌマガヤ、サジオモダカ、ノブキ、キンミズヒキ):22/10-25/13℃で最も発芽率が高いが、全体的に発芽率は60%以下、である。TYPE I以外の種では、永続的土壌シードバンクを形成する可能性が高いと考えられる。また、種子発芽特性の多様性と生育環境の多様性が、里山の植物種多様性を支えているものと推察される。