| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-849

巨椋池地域における現存する湿地と干拓された湿地の水生植物の散布体バンクの比較

*今西亜友美, 今西純一, 松本仁, 森本幸裕, 夏原由博(京大院・地球環境)

京都南部の桂川、宇治川、木津川の三川合流地帯にかつて存在した巨椋池と周辺低湿地には、日本産水生植物の約8割の属が生育し、食虫植物ムジナモの生育地として天然記念物にも指定されていた。しかし、巨椋池は昭和16年、周辺の横大路沼は昭和29年に干拓が完了し、ムジナモやオグラコウホネなど多くの希少な水生植物が巨椋池地域から絶滅した。しかし、現在でも掘り返しなどの撹乱によって、オニバスやミズアオイといった絶滅危惧種が出現することがあり、干拓前の植生が埋土種子として残されている可能性がある。本研究では、巨椋池地域の残存湿地および干拓地から堆積物を採取し、撒き出し試験を行うことで、散布体バンクによる水生植物の再生可能性を検討した。残存湿地である京都競馬場馬場中央の池と淀城跡公園の堀の底から、それぞれ2007年10月と11月に堆積物を採取し、2008年2月から撒き出し試験を行った。また、横大路沼干拓地2地点から2006年10月と2008年4月に土壌を採取し、2007年2月および2008年4月からそれぞれ撒き出し試験を行った。その結果、馬場中央の池の堆積物からは被子植物3種、公園の堀の堆積物からはシダ植物1種、被子植物8種の発芽が確認された。公園の堀では、京都府レッドデータブックで絶滅危惧種に指定されているオニビシの生育が確認され、撒き出し試験でも発芽が確認された。横大路沼干拓地2地点の採取土壌からは、車軸藻植物4種、蘚苔植物1種、シダ植物2種、被子植物56種の発芽が確認された。このうち、環境省または京都府のレッドデータブックの記載種は、ミズアオイ、ミズオオバコ、ミズマツバ、サデクサ、トリゲモ、ミズワラビ、イチョウウキゴケ、シャジクモ、ジュズフラスコモ、キヌイトフラスコモの10種であり、残存湿地よりも干拓地のほうが高い再生ポテンシャルを持つことが示唆された。


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