| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
シンポジウム S03-1
かつて住民に利用されていたアカマツ林は1960年代の燃料革命,肥料革命により利用が減少し進行遷移が生じた.Toyohara(1984)は管理放棄から時間経過の少ない1980年代以前を中心とした広島県のアカマツ林において詳細な植物社会学的植生調査を行い群落体系をまとめ,群落下位単位として遷移段階に相当する4つのタイプに区分している.Toyohara&Fujihara(1998)では種類組成により区分した遷移段階とマツ枯れ被害度およびその後の遷移の関係を明らかにした.それによるとアカマツ二次林はヒサカキタイプ,アラカシタイプ,ヤブコウジタイプ,マンリョウタイプ,さらにベニシダタイプの5つに区分でき,遷移初期段階のヒサカキタイプから遷移後期段階のマンリョウタイプになるにつれマツ枯れ被害の増大が示唆された.マツ枯れ被害を受けている森林において遷移後期の群落タイプやアカマツを含まない広葉樹林の面積増加が認められた.マツ枯れ後の森林動態に関しては,ヒサカキタイプでは単木的な枯死に留まりマツ林が維持されやすいのに対し,他のタイプでは集団枯死によりマツ林が崩壊し,林床に定着していた落葉広葉樹のコナラや常緑広葉樹のアラカシなどに対する光環境の好転による成長の促進が見られ,急激な優占種の交代が生じることを示した.マツ枯れ以前の組成と林分構造が重要であるが,それらは人為的インパクトや群落の空間配置の影響を受けるものと考えられる.現在ではかつて枯死を免れた個体や林分,再生マツ林への被害が生じていると考えられる.マツ枯れ被害の空間的移動が認められる.