| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


シンポジウム S03-3

アカマツ林の分布と地質・地形の関係

*太田 謙(岡山理大・総情数理環境), 波田善夫(岡山理大・総情生地)

本講演では、主に岡山県南部を中心とする瀬戸内沿岸地域において、アカマツ林の分布が地質や地形とどのような関係にあるのかを示し、アカマツ林の立地環境を考察する。

岡山県南部は、温暖少雨で乾燥する瀬戸内気候下にある。瀬戸内の地域は古くから人間活動が盛んで、山林は徹底的に利用された経歴を持っている。森林植生はアカマツやコナラの二次林が大部分であり、スギなどの植林は少ない。アカマツ林はほとんどが樹高10−18m程度の二次林であるが、沿岸域には樹高3−10m程度の貧弱なアカマツ低木林がある。

現存のアカマツ林の分布と地質・地形の関係を明らかにするため、流紋岩・堆積岩・花崗岩の各地域において植生調査を行い、群落を区分し植生図を作成した。植生図はGIS技術を用いてDEMと重ね合わせ、地形条件との関係を解析した。

解析の結果、アカマツ林の分布面積は地質の種類に大きく影響を受けていた。アカマツ林は堆積岩地域では比較的少なく、流紋岩や花崗岩地域では非常に多かった。また、流紋岩地域では貧弱なアカマツ低木林であった。

アカマツ林と地形の対応関係は地質によって傾向が異なり、堆積岩地域ではアカマツ群落は凸地形や集水面積の小さい立地に限られていた。一方、流紋岩地域では地形と植生の対応関係が明確ではなく、全山がアカマツ林であった。これは土壌の発達が悪いためと考えられた。花崗岩地域では斜面部や尾根にアカマツ林が広がっていた。しかしマツ枯れ病被害によって高木層のアカマツが欠落し、荒廃した植生となっていた。

DEMの解析の結果、地質によって地形が異なっていた。従って地質によってアカマツ林の存在様式が異なると考えられる。アカマツ林の生態の理解や里山林の管理には、地質と地形を考慮する必要があるだろう。


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