| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


シンポジウム S06-1

旱魃に対して脆弱な社会−生態システムのレジリアンス向上の条件

梅津千恵子(地球研)

旱魃に対して脆弱な社会・生態システムのレジリアンス向上の条件

レジリアンスresillienceはラテン語のresilire 「元に戻るという意味」にその語源がある。レジリアンスの概念はシステム生態学者C.S.Hollingの1973年の論文、「生態システムのレジリアンスと安定性」によって生態学の概念として提唱された。初期のレジリアンス概念では、「工学的レジリアンス」として攪乱を受けた生態システムが、攪乱以前の初期の均衡に戻る回復時間として定義された。回復時間が短いほど、生態システムの攪乱に対するレジリアンスは高いとされた。その後、工学的レジリアンスで考えられた生態システムの単一均衡(安定点が1ヶ所であること)の概念は、非線形、複数均衡、レジームシフトなどの複雑系の概念を取り込んで「生態的レジリアンス」として拡張された。1990年代以降、近年のレジリアンスの概念は、攪乱やショックを受けたシステムが自ら再編成する能力をより重要視している。

近年、これら生態学や工学の世界で使われてきたレジリアンスの概念を複雑な社会生態システムに応用しようとする試みがなされている。特に災害からの地域社会の回復や、環境資源に生業を大きく依存する途上国の農村社会の発展を考えるときに、レジリアンスの視点は極めて重要である。本発表では、地球研のレジリアンス・プロジェクト「社会・生態システムの脆弱性とレジリアンス」における研究を紹介し、レジリアンスの概念をザンビア旱魃常襲地帯の農村社会の研究へ応用する場合のフレームワークを議論する。ザンビア南部州では旱魃による農業生産の壊滅的被害を過去に何度も経験してきた。生態システムの低下はさまざまな社会的対応をもたらす。農業に依存する世帯のレジリアンスを高めるための条件を考察する。


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