| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
シンポジウム S11-6
2006年3月に開催された第8回生物多様性条約締約国会議(COP8)では、民間セクターの参画に関わる決議が初めて採択された(決議VIII/17)。その決議のなかで民間セクターは「恐らく最も参画が出遅れている部門」とされている。具体的には、生物多様性に関わる基準の策定、生態系サービスの価値を評価するツール、オフセットの枠組み、産業基準や認証スキームの確立などが呼びかけられている。日本でも、農林水産業における基準、認証は食の安全の観点からも議論されており、また生態系協会では事業に対してハビタット評価認証(JHEP)を開始している。ところが現状では、環境省の調査では7割の企業が「生物多様性は重要であるが、自社の活動との関連性は低い」としており、自らの問題として考えている認識低い。
生態系サービスを低下させるリスクである生態リスクは、企業にとっても事業の持続可能性と評判(reputation)の側面から本業に関わってくる。リスクが顕在化すると、前者は原材料の調達、操業の連続性で、後者はブランド力の低下をもたらす。「発生率×損害額」という工学的リスクの発想に加え、政策や企業活動を含む社会で、生態リスクがどのように認識され、解釈されるのかというリスク・コミュニケーションの分析が必要となる。
環境省や経団連のアンケート調査を踏まえながら、本研究では企業の認識の現状とリスク・コミュニケーションの課題と論点をレビューし、2010年に愛知県名古屋市で開催される第10回生物多様性条約締約国会議(COP10)に向けた提言を行なう。