| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


シンポジウム S20-2

地上部における菌類との相互作用が作り出す森林の種多様性

大園享司 (京都大学・院・農)

植物体地上部における相利共生菌や病原菌の感染は、植物の適応度に影響することで植物の個体群動態を変化させ、ひいては植物の種間相互作用や群集構造を介して生態系の生物多様性や生態系機能に影響を及ぼしうる。地上部における相利共生菌の感染が引き起こすこのような一連の変化は、生活環の短いイネ科草本を材料とした草地-グラスエンドファイト系で実証的に示されている。相利共生的なグラスエンドファイトの感染が群落の生産性を増加させる一方、群落の種多様性を低下させることが明らかにされている。その一方で、森林樹木-エンドファイト系では、菌類の感染が樹木個体の適応度に影響を及ぼすことを示す実証例はあまりない。樹木エンドファイトは相利共生的な機能をそれほど担っていないのかもしれない。病原菌の感染が植物の個体群動態に及ぼす影響は、ターンオーバーの速い毎土種子や実生の個体群、および樹木個体内のシュート個体群で実証的に示されている。しかしこれらが寿命の長い樹木個体からなる森林の長期的な動態に及ぼす影響はあまりよくわかっていない。病原菌が森林の構造や多様性に劇的な影響を及ぼす例としては、外来種の感染による樹木個体群の壊滅(オランダニレ病菌、クリ胴枯病菌、北米におけるミズキの炭疽病菌、豪州のエキビョウキンなど)や、根株腐朽菌の感染による樹木個体の枯死(北米のラミネート根株腐朽菌など)といった現象が知られている。このような菌類の活動は森林の更新を促し生物多様性の創出・維持に関わっている。


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