| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


シンポジウム S20-6

シカおよびササとの相互作用が作り出す森林の種多様性

*日野輝明 (森林総研関西), 伊東宏樹 (森林総研多摩) , 高橋裕史(森林総研関西)

シカによる採食は植物の個体数や多様性の減少の重要な要因であり,その影響はシカの密度にともなって増加すると考えられる.しかし,シカによって排出された糞や尿には土壌微生物量を増加させ,窒素の無機化速度を促進する効果が知られている.また,シカがまったくいないと,蹄耕などの土壌撹乱に依存して更新する樹種がみられなくなる可能性があるので,いくらか存在するときに樹種多様性は最大になるにちがいない.一方,ササは光をめぐる競争においても水分をめぐる競争においても下層植物群集の最強の種であり,ササの現存量の増加にともなって生育できる植物の種類や個体数は指数的に減少する.しかしながら,ササが生育していない裸地状態では,実生が草食獣にみつかって食べられやすくなったり,土が流されやすくなるために埋まったり倒れたりして死ぬ実生が増えるため,ササは全くないよりはいくらかあるときに,樹種多様性は最大になるにちがいない.さらに,シカの採食によってササの現存量が低く抑えられることで,樹木の実生の生存と成長が促進される.したがって,シカとササはどちらも全く存在しないよりはある程度存在する場合に樹種多様性が最大になることが予想される.講演では,大台ヶ原のデータからこの予想を検証する.


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