| 要旨トップ | ESJ56 自由集会 一覧 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
自由集会 W10 -- 3月17日15:00-17:00 L会場
進化生態学において、系統関係を無視した研究はあり得ない。そのため、我々はしばしば分子データを用いた系統樹の推定を行い、その解釈に頭を悩ませることとなる。しかし、分子系統樹の推定法は未だ発展途上にあり、1ユーザーが適切な系統推定を行うことは容易ではない。さらに、得られた系統樹の解釈を正しく行うには、対象生物群と系統樹に対する深い理解を必要とする。そのため、ともすれば必ずしも信頼のおけない系統樹に基づいて議論がなされたり、系統樹が誤って解釈されてしまう場合もありうるだろう。苦労して得たデータから正しく最大限の情報をとり出すにはどうすればよいだろうか?
本集会では、まず田辺が系統推定に使われる分子進化モデルとその選択法、今のところ最も優れた最尤系統樹探索法と言われているLikelihood Ratchetを概説した上で、系統樹上での分子進化速度の変化を検出する方法を述べる。次に奥山が実際のデータ例から複数遺伝子座を用いてより高解像度の種の系統樹を得る試み、および系統樹を用いて適応形質を支配する遺伝子を探索する試みについて述べる。
講演では適宜ソフトウェアを用いた実演を交えながら説明する。さらに実際のデータを用いて、生物の多様性や適応進化の謎に迫るために系統樹がどのように応用可能かについても、企画者の思いつく限り多方面から紹介し、その上で、進化生態学における系統樹推定の現状と課題について参加者と共に議論したい。
進化モデル選択とLikelihood Ratchet、系統樹から進化速度の変化を検出する
種の系統樹と遺伝子の系統樹、そして表現形質から適応進化を考える