| 要旨トップ | ESJ56 自由集会 一覧 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
自由集会 W16 -- 3月17日17:15-19:15 F会場
国内各地の平野部の水田でそうであったように、琵琶湖でも、かつては湖からやってきたフナ類(ニゴロブナ、ギンブナ)、コイ、ナマズなどが水田に入って産卵していた。水路-水田間落差が大きくなった現在では、魚が水田へ侵入できなくなっているが、今なお、これらの魚が水田めざして遡上している。私たちは、2007年から「湖に隣接する水田地帯の特性の解明」と題した研究を行っている。本研究では、琵琶湖と人間が永年にわたって造ってきた水田(水田地帯)を行き来する、琵琶湖を代表する魚・ニゴロブナ(琵琶湖固有亜種)を媒体として、湖畔にある水田地帯の特性の解明をめざしている。このフナのように、湖と水田地帯という異なる環境を行き来する生き物にとっての水田(水田地帯)の意義、機能を解明することは、これまで明らかにされてこなかった水田生態系と湖沼生態系の関係性を紐解くヒントになる。さらに水田地帯を「生き物」と「人」との関わりの場として重層的にとらえ、学際的側面からアプローチし、統合化することは、今後の水田生態系を維持、保全していく上でも重要と考えられる。
本集会では、本研究で明らかにされたニゴロブナをめぐる水田、水路、琵琶湖に関わるいくつかの知見、そして人の水田利用にかかわる特徴的な事例を紹介し、湖−水田生態系研究のさらなる進展を図る契機としたい。併せて、国内外における水田生態系研究の今後のあり方についても議論する場としたい。
司会:前畑政善・牧野厚史 コメント:端 憲二(秋田県大生物資源)・日鷹一雅(愛媛大農) 総合討論
ニゴロブナの接岸と農業用水路への遡上要因の検討
魚を水田に遡上させる試み―魚のゆりかご水田
水田におけるニゴロブナ仔稚魚の成長
共同利用空間としての水田地帯