| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) I1-01
陸生プラナリアは陸貝類の捕食者の一つである。陸貝捕食性の貝類については、餌である陸貝の這い跡を追跡する行動が知られているが、触角を持たない陸生プラナリアについては、環境の変化に敏感で観察が難しいことから、追跡行動の研究はほとんど行われてこなかった。ニューギニアヤリガタリクウズムシ(以下ウズムシ)は、侵略的外来陸生プラナリアであり、小笠原諸島父島では本種の捕食によって固有陸産貝類の個体数が激減している。本研究では、ウズムシの陸貝探索方法を明らかにするため、陸貝の這い跡をウズムシが追跡するかどうかを室内実験によって検証した。蒸留水、陸貝(ウスカワマイマイ)の這い跡、ウズムシ他個体の這い跡、自個体の這い跡、をそれぞれつけた細長い処理プレートを用意した。処理なしプレート同士、もしくはいずれかの処理プレートと処理なしプレートとを横一列に連結して並べ、その接点とウズムシを入れた容器とをチューブでつなぎ、プレートに直角にウズムシを誘導した。赤外線ビデオカメラを用いて終夜撮影を行い、チューブから出てきたウズムシの行動を観察した。陸貝の這い跡と処理なしプレートを並べた処理では、73%の個体が陸貝の這い跡のついたプレートを辿ったが、その他の処理では、98%の個体が直進するなどしていずれのプレート上も歩かなかった。さらに、プレートにつけた陸貝の這い跡の中間地点に、プレートと直角にチューブの出口を設置したところ、左右どちらの方向へ辿るかはランダムに決定されていた。ウズムシは、陸貝の這い跡に含まれる化学成分に反応して餌貝を探索しているが、その方向性は認知していないと考えられた。