| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) I1-03
日本沿岸の砂泥性干潟に生息する小型のカニ、チゴガニについて、分布域の北限近くから南限近くまでの6地域集団を対象に、求愛行動のwavingの様式と、なわばり維持行動のバリケード構築行動の頻度にみられる地域間変異を明らかにした。waving様式の変異については、雄個体の地域間移植実験により、その様式の変異は、地域集団固有のものであることが検証された。バリケード構築行動頻度の変異については、人工障壁物を使った野外実験より、障壁物に対する忌避性が、地域集団間で異なっていることを見出し、地域集団特有の行動特性の違いが、バリケード構築頻度の地域変異に反映されているとみられた。さらに、waving様式とバリケード構築頻度の地域間変異は、ともに日本本土の集団と琉球列島の集団の間で明瞭な相違を示すという共通した特徴がみられたが、遺伝的集団構造においても、日本本土と琉球列島との間に大きなギャップが認められた。すなわち、社会行動の地理的変異が、地域集団間の遺伝的類縁関係と結びついているといえる。