| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) I1-04
日本本土産のヤマトシロアリ(ミゾガシラシロアリ科)は,朽木内とその周辺の土壌に生息し,多くの生物と直接的,間接的に関わっている。一方同じ真社会性のアリ類(ハチ目,アリ科)はシロアリ類とは食性が異なり,その生態も多様である。森林性の朽木内に営巣する種類においては,シロアリ類の捕食者として,また多くの場合には生活空間をめぐってシロアリと敵対関係が生じている。そこでヤマトシロアリと朽木の共有が観察された各種アリ類との相互関係を,暗室内における行動観察によって調べた。ヤマトシロアリ職蟻,兵蟻と各種アリ類をそれぞれシャーレ内で接触させ,その反応を観察し,噛み付き,威嚇,逃避行動などを指標として両者間の関係性を評価した。
その結果,アリの種類によってその攻撃性には違いが見られた。なかでもオオハリアリ (ハリアリ亜科)およびアズマオオズアリ (フタフシアリ亜科)はヤマトシロアリに対して積極的な攻撃が観察され,重要な捕食者となっていることが示唆された。またヤマトシロアリの坑道利用が観察されたトビイロケアリ(ヤマアリ亜科)についても強い敵対関係が示唆されたが,上記2種とは様相が異なっていた。一方アリ類に対して致命的な攻撃力を持つヤマトシロアリ兵蟻は,その攻撃行動が敵の大きさに比例して激しくなる一方,アメイロアリ(ヤマアリ亜科)や,トビムシ専食のウロコアリ(フタフシアリ亜科)などの小型のアリ類に対しては敵対性を示さず無視する傾向にあった。以上のことから,アリ類とヤマトシロアリの営巣木の共有の背景は一律ではなく,その敵対関係にも様々な形があることが示唆された。
この他,イエシロアリ(ミゾガシラシロアリ科),タカサゴシロアリ(シロアリ科,テングシロアリ亜科)とアリ類との関係に関する観察結果も報告する。