| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) I1-12

海中雑音がイルカの音声と群れに与える影響

*森阪匡通(京大・野生動物研究セ), 酒井麻衣(東大・生命科学NW), 白木原美紀(東邦大), 森恭一(帝科大), 小木万布(御蔵島観光協会)

温帯域の海中は、主にテッポウエビなどの甲殻類が発する生物雑音(テンプラノイズ)で満ち溢れ、こうした環境でコミュニケーションを行うイルカの音声 (ホイッスル音) は、このような海中雑音の中で効率よく届くデザインになっていることが考えられる。Morisaka et al. (2005) で、特に海中がうるさい天草下島諸島のミナミハンドウイルカは、他の2地域に比べ周波数が低く、周波数変調の少ないホイッスル音を発していることを明らかにした。今回、3地域のホイッスル音の音源音圧レベル(SL)を、3つの水中マイクを用いた水中マイクアレーを用いて計測したところ、地域間で有意差が見られた(Kruskal-Wallis; p<0.0001)。また、各地域内でも、録音時の背景雑音とホイッスルのSLは有意に相関していたが、これだけでは地域差を説明できるものではなかった(ANCOVA; 録音時の雑音p=0.03、地域p<0.01、交互作用p=0.59)。うるさい地域では音圧を大きくし、その特徴も変化させて雑音対策をしていることがわかった。さらに最もうるさい地域である天草下島諸島のイルカの群れは、お互いにホイッスルが聞こえる300m以内に留まることが多く、イルカはホイッスルを用いて、群れの結合を維持していることが示唆された。


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