| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) J1-01

資源競争説の誤り:近縁種間の競争実験は何を測っていたのか?

*西田隆義,岸茂樹,京極大介(京大農昆虫生態)

資源をめぐる競争は、かつて種の競争的排除や共存を決める上で決定的に重要と考えられてきた。そして現在でも、閉鎖的な実験系においては重要と考えられている。われわれは閉鎖系における競争排除に疑念をもった。その理由は以下の通りである。(1)高密度の閉鎖系とはいえ競争排除があまりにも短期間に生じること、(2)そのためには競争係数が極端に高い必要があるのにそんな強烈な競争を観察した人はいないこと、そして(3)資源競争は密度依存的に働くので、競争により密度が低下した種はかえって増殖率が上がりやすく絶滅しにくくなるはずであること、である。実際に、アズキゾウムシとヨツモンマメゾウムシの系において競争実験を行ったところ、競争排除を決めているのは資源競争ではなく、種間で非対称的に働く配偶をめぐる干渉であることを明らかにした。両種のオスは、他種のメスに対してもしつように求愛を繰り返し、これがメスの産卵数や生存率を引き下げるのだが、その効果が種間で非対称なのだ。そして干渉は、正のフィードバックを通じて弱い種を急速に絶滅させる効果を持つ。

しかし、繁殖干渉がどのくらい普遍的な現象であるかについては、分かっていない。これまで行われきた閉鎖系での資源競争実験を吟味することで、資源競争と繁殖干渉の相対的な重要性を評価できる可能性がある。本講演では、これまで行われてきた閉鎖系での競争実験について、とくに競争排除のスピード、資源競争の強さおよび競争種の近縁さに着目することで再評価を行う。


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