| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) J1-03

岩礁潮間帯固着生物群集の相互作用網の複雑さと安定性の関係

*辻野昌広(北大環境),仲岡雅裕(北大FSC),堀正和(瀬戸内水研),山本智子(鹿大水産),奥田武弘(東北水研),野田隆史(北大地球環境)

生物群集では、競争、相利、捕食といった作用が生物群集の構成種間に網目のように複雑に絡み合い、相互に作用しながら個体群が維持され、群集が形成されている。生物群集を構成種間の相互作用によって結ばれるネットワークとして捉えることで、生物群集が形成されるプロセスや構造維持機構の解明、その動態を考えることができる。この種間相互作用構造に関して、「種数が多く複雑に相互作用しているほどその生態系は安定になる」という理論研究を発端に(May, R.M. 1972, Will a large complex system be stable? Nature, 238, 413‐414.)、相互作用のどのようなリンクパターンが生物群集を安定に保つかについて多くの研究が行われてきた。しかし、野外群集における種間相互作用の定量的な把握が困難であることから、先行する理論研究に対し、野外データによる実証研究が不足している。

本研究では、岩礁潮間帯固着性生物群集を対象に、推移確率行列を用いて種間相互作用を定量的に推定する方法を提案し、相互作用構造と群集の安定性についての理論予測に従う以下の疑問に対する検証を行った。

1)種数が増えると結合度(相互作用網の密度)は低下するのか。

2)種数が増えると相互作用強度は弱くなるのか。

3)群集の安定性は結合度、相互作用強度及び種数の3つの関係によって決まっているのか。

本講演では、以上の検証の結果を先行する理論研究結果と対応させ議論したい。


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