| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) J1-11
低地熱帯林の伐採が腐食由来の昆虫多様性にどのような影響を与えるかを明らかにするため、腐朽木を利用する腐食性および捕食・寄生性のハエ類の科を単位として、個体数と群集組成を比較した。 腐朽木を利用するハエ類は森林生態系の中で木材やキノコの分解者、それらの捕食・寄生者として、また、羽化したハエ類は他の鳥やクモ等の獲物として機能する。
マレーシア・サバ州東部の熱帯低地林に設けた、保全林 4 ヶ所、若い低インパクト伐採林(2000年伐採 2 ヶ所)、古い低インパクト伐採林(1995年伐採 2 ヶ所)、従来型伐採林(1970 年代伐採 3 ヶ所)の調査プロット(0.19 ha)において、2009年2月17日から 2009 年 2 月 29 日までの間、調査地内の腐朽木(直径 5-15 cm、長さ 50 cm 以上)の体積を測定した。各調査地を 10 m 四方の小プロットに分割し、腐朽木体積が大きい上位 3 小プロット内の腐朽木 (0.03-0.08 m3) を 3 つの袋状の昆虫羽化トラップに詰め、 2009 年 2 月 17 日から 2009 年 10 月 20 日までの間に羽化したハエ類の個体数を計数した。各調査プロット間の科構成の違いを主成分分析によって解析した。
腐朽木の体積は各プロット間で伐採の有無と強度による大きな違いはなかった。また、低インパクト伐採林の間でも伐採後の年数による大きな違いは見られなかった。腐食者からなる科群の構成は林内の腐朽木量の多少によって異なった。また、捕食者あるいは寄生者からなる科群は若い低インパクト伐採林と従来型伐採林の間で大きく異なった。ハエ類の中でも伐採の強度によって科の構成が異なるのは、分解者よりもそれらの捕食者あるいは寄生者であると考えられた。