| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) J2-08
伊豆諸島は火山島であり、植物、昆虫、鳥類等の固有種や固有亜種が生息している。噴火という大規模な環境変動が度々起こっているこのような海洋島では、噴火に伴う島間での移動や分散が、固有種、固有亜種の個体群維持に影響している可能性がある。そこで、伊豆諸島での島間の遺伝的交流の程度を明らかにするために、諸島内に複数の亜種が分布しているヤマガラを対象に、遺伝的集団構造を調べた。
伊豆諸島にはヤマガラが3亜種分布しており、最も北に生息しているヤマガラは本土と同じ亜種であり、南の3島に生息するオーストンヤマガラと、中央の島々に生息するナミエヤマガラは伊豆諸島の固有亜種であり、それぞれ絶滅危惧II類とIB類に指定されている。南の亜種ほど体サイズが大きく(Higuchi 1976,Yamamoto & Higuchi 2004, Yamaguchi 2005)、顔や胸の色が濃く(Yamaguchi 2005)、一腹卵数や育雛期間などの生活史形質にも違いが見られる。しかし、ミトコンドリアDNAの塩基配列分析では、亜種間での変異はほとんどなかったため、より変異速度の速いマイクロサテライトの分析によってこれら3亜種の遺伝的集団構造を調べた。集団構造から、本土2カ所と伊豆諸島のヤマガラの分集団を調べた結果、まず、神津島とそれ以外の場所の2つの分集団に分かれ、新島の集団構造はこれら2つの分集団の混合を示した。さらに、神津島・新島を除いて分集団を解析した結果、本土と大島、式根島と三宅島と御蔵島、八丈島の3つの分集団に分かれた。これらの結果から、伊豆諸島のヤマガラでは、集団構造に階層構造があること、分集団はIsolation by distanceや亜種区分とは必ずしも一致しないことが示された。