| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) J2-12
[目的] ヨーロッパウナギ資源が激減しているとの判断から、その輸出入規制が昨年3月13日に施行され、またEUはシラスウナギ漁獲量を2013年までに60%削減することを合意した。日本のウナギ資源も減少の一途を辿っている。この主な減少原因は、ウナギの生活環境の破壊や改変、またシラスウナギの乱獲等の影響によると指摘されてきた。河川横断人工構造物であるダム建設は見直しか、中止の方向に政治的判断された。このような背景の下、日本におけるウナギ資源の現状を再認識し、資源回復のためにできうる対策は何かを検討したい。
[方法] これまでの知見を再整理するために、農林水産省農林統計部(漁業・養殖業生産統計年報;1965年〜2008年)、日本養殖新聞(日本の鰻データ&ダイアリー;2006~2010)、日本ダム協会(ダム年鑑2003)等を使用した。
[結果と考察] 日本のウナギ年間漁獲量は、1969年に最高の3,194トンから、2008年には最低の271トンに激減し、40年間で91.5%の減少割合を示した。シラスウナギの採捕量は、1969年が最高の174トンであったが、2006年には8トンにまで激減した。ダム建設の中止により、ウナギの生活環境が現状よりも悪くならないことを期待し、ウナギ資源の回復への対策を以下のように考える。
1.汽水域から淡水域におけるウナギの生活史、特に成熟過程の解明
2.不要ダム撤去の推進と人工護岸等の構造物を可能な限り自然的状態へ修復し、ウナギの生活環境の保全を図る。
3.ウナギの保護水域を設置すると共にシラスウナギの採捕量を規制する。
4.余剰養殖稚魚の早期放流を促進する。
5.特定水系におけるウナギ資源のモニタリングを実施する。