| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-004

屋久島照葉樹林稚樹層のシカによる組成変化

*新山馨(森総研東北),勝木俊雄(森総研),安部哲人(森総研九州),八木貴信(森総研東北),香山雅純(森総研九州),田中浩(森総研九州)

屋久島西部の照葉樹林試験地(200m×200m)で、稚樹方形区(2m×2m)を20mごとに200個設定し、2005年と2009年の2回、稚樹(DBHが5cm以下、当年生を除く)のセンサスを行った。稚樹は樹高200cmと30cmで区切り、大、中、小に3区分した。稚樹数は幹数で集計した。2005年の幹数で最も優占したのはバリバリノキで63%を占め、ついでサザンカ(8%)、ヒサカキ(5%)であった。4年間で最も幹数が減少したのはボチョウジで、生存率は0.66/yrだった。次いでクロバイ(0.84)、サカキ(0.86)、サンゴジュ(0.90)の順だった。しかし稚樹全体としては幹数は安定しており生存率は1.00/yrであった。幹数の増加に寄与したのはバリバリノキで、2005年の1360本が4年間で1626本に増えた。これらはほとんどが実生からの新規加入で萌芽に由来する稚樹は少なかった。明らかにシカの食害と思われる例は、観察した2264本中、ボチョウジで38本、他樹種では4本のみ観察された。4年間に枯死または消失した稚樹にシカ食害があったかどうかは確認できなかった。しかし、生存率とシカ食害の観察例から、屋久島照葉樹林の稚樹層では、シカの影響はボチョウジの稚樹に最も顕著に表れていることは明らかである。4年間でボチョウジの幹数の割合は8%から1.5%に減少した。一方、バリバリノキは元々の稚樹数が多いだけでなく、シカの食害がほとんど無く、割合は4年間に63%から72%に増加した。残念ながら屋久島照葉樹林の主要構成種であるイスノキ、モクタチバナ、フカノキ、ウラジロガシなどは稚樹数が少なく、今回は稚樹数の変動が十分に検討できなかった。


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