| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-010
熱帯林の樹木多様性に及ぼす伐採の影響を調べた例は少なく、かつ、伐採後に多様性が低下・増加・変化しない等その結果は一貫していない。我々は、ボルネオ島サバ州の混交フタバガキ原生林と伐採強度が異なる2つの二次林(最近導入が進んでいる低インパクト伐採と従来型の強度伐採)に複数の大小のプロットを設置し(3林分にそれぞれ2ha及び0.2ha×3-4反復)、伐採強度とサンプリングの空間スケールが樹木多様性に及ぼす影響を調べた。
幹数当りの種数は、0.2haでは、従来型林で低く原生林と低インパクト林が同程度に高かった。2haでも同様の傾向だったが、小径木クラスでは原生林と従来型林が同程度で低インパクト林がそれらより若干高かった。択伐後の二次林には比較的多様性の高い小径木を含むパッチがモザイクに分布しており、0.2haでは十分サンプリングされなかったそれらが2haスケールではサンプリングできたものと考えられた。二次林内の不均質性を反映して、2haスケールのβ多様性(2haプロット内での種の入替え率)は伐採強度が強くなるほど高くなった(従来型>低インパクト>原生林)。一方、広域スケール(0.2haプロット間)のβ多様性は、二次林において特定のパイオニア種(マカランガ属等)が優占することを反映して、伐採強度が強くなるほど低くなった。このように、樹木多様性はサンプリングの空間スケールの影響を強く受けていた。一方、種組成の類似度解析(NMDS)の結果、0.2、2haプロットともに、原生林と低インパクト林の種組成は互いに似ていたが従来型林の組成は他の2林分と異なっていた。熱帯林の樹木群集への伐採影響は、空間スケールの影響を強く受ける種多様性より、種組成による評価の方がより適当である可能性が示された。