| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-011

オーストラリア・タスマニア島とニュージーランド南島のナンキョクブナ林の植生比較

目黒伸一(国際生態学センター)

ナンキョクブナ林は世界でタスマニアのほかにはオーストラリア大陸南東部、ニュージーランドおよび南米にのみ成立する冷温帯常緑広葉樹林として知られている。ニュージーランド南島はおよそ南緯41〜47度に位置し、島の中央〜西側に南北に脊梁山脈が走り、偏西風により島の西側で降水量が高く、年間3000mm以上の場所が広がる。タスマニア島はオーストラリア大陸の南東240kmの南緯42度前後に位置し、その広さは北海道の約8割に相当する。調査した場所はおもにニュージーランド南島の西側に位置する海岸線から山地にいたる場所とタスマニア島の高地を除く全域である。

植生調査資料を解析した結果、タスマニア島ではナンキョクブナ群落は特に区分種を持たない典型下位単位とEucalyptus regnansなど区分種をした下位単位およびPhyllocladus aspleniifoliusEucryphia lucidaなどを区分種とした下位単位に別れることが判明した。この結果、いわゆる背高ユーカリが林冠を構成するような森林タイプは、典型下位単位を潜在自然植生としたナンキョクブナ林の立地に出現していることが明らかになった。また、Phyllocladus aspleniifoliusEucryphia lucidaなどは冷温帯常緑広葉樹林に出現する種と考えられていたが、攪乱を受けた林内に出現していることが明らかになった。一方、ニュージーランド南島では海岸から森林限界まで常緑の森林が展開され、海岸林や特殊母岩・土壌立地では多くのイヌマキ科の樹種によって森林が構成され、土壌が発達すると森林限界まで常緑広葉樹のナンキョクブナが林冠を優占する森林が形成されていた。

この結果、両島において大陸の移動がナンキョクブナ林の森林群落形成および分布の違いに大きく寄与していることが示唆された。


日本生態学会