| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-019
寧夏回族自治区固原の乾燥地草原の回復過程を明らかにすることを目的として、30年間から5年ごとに禁牧を保ってきた草地(禁牧年数が30年、25年、20年、15年、10年、5年の6草地)と現在放牧を行っている草地(禁牧年数0年)を含めた7つの草地群落を対象に、種ごとの出現率と種構成、種数、地上部現存量、土壌硬度を2009年に測定した。
種構成の変化について、Stipa bungeanaは7つの草地すべてで高い出現率(0.697から0.995)であり、この地域の代表的な優占種であった。禁牧年数が0年から15年までの間では、優占種が入れ替わる傾向がみられたが、15年以降では15年に優占した数種が30年まで高い出現率であった。
種数の変化はスケール依存的な動態を示した。大面積あるいは群落ごとの全種数では0年と30年が高く、5年から25年の種数はそれより低い傾向があった。これは低出現率の種群の種数の変動の影響と考えられた。出現率の低い種群(ここでは7草地中、出現率の最大値が0.1以下の種群)では、0年で22種だったが、10年で11種、30年で24種と禁牧年数が進むにつれて、谷型に変化する傾向があり、群落全体の種数と同様な変化を示した。一方で、単位コドラート当たり、または小面積では、種数はおおよそ単調的な増加傾向を示した。群落全体の種数が減少しているにもかかわらず、小スケールでの種数が増加していたことは、群落構成種それぞれの出現率が高い状態であったと考えられた。
以上のことから、本研究で調査を行った地域では、禁牧処理後の種構成や種数の変化が日本の草地と比べ長期にわたっており、スケール依存的な種数の変動が生じていることが示された。