| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-027
木本植物の植栽は乾燥地の環境修復技術であり、看護効果による植生回復の促進が期待される。しかし、同一地域で灌木種と高木種の効果を比較した研究はほとんどない。本研究では、中国・ホルチン沙地へ導入された灌木種(Caragana microphylla (Ca))と高木種(Populus simonii (Po))が下層植生におよぼす看護効果の差異を植生遷移と草地の放牧利用の観点から明らかにした。
各植栽種につき、植栽後約5年および25年経過した植栽区 (Ca5・Ca25・Po5・Po25)を選定し、植生調査を実施した。生活形と嗜好性に基づき出現種をそれぞれ5つに分類し、植栽区内の植生分布と樹冠との関係を解析した。
植栽種以外の木本は植栽種と競合した。草本については、Po25では看護効果が植生量と植生遷移両面で広範囲に表れるが、他の植栽区では看護効果の表れる範囲が樹冠下に限定された。Ca25とCa5では植生量に及ぼす看護効果が大きく、Ca25では植生遷移の面でも樹冠下で看護効果が表れた。Po5の樹冠下での看護効果は植生量と植生遷移両面で灌木種に比べ弱かった。しかし、植生遷移の面での看護効果は灌木種植栽区に比べ広範囲に及んだ。また、嗜好性が普通・良にあたる種群は灌木樹冠下に集中し、他の種群にはその傾向が認められなかった。
看護効果の及ぶ範囲の違いは、樹高の高い高木種植栽区で風食低減効果が広範囲に及ぶこと、灌木種が地表付近で分枝するためリター供給が樹冠下に集中し土壌回復も樹冠下に限定されることによると考えられる。Po5の高木種も地表付近で分枝したため、高木種と灌木種両方の特徴を持つ効果を示したといえる。嗜好性分類と樹冠との関係が不明瞭なのは、この分類群が様々な形態的・生理的特性を持つ種を内包するためと考えられる。