| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-031

南アルプス北岳におけるダケカンバ林の種組成および構造と成立要因

石田祐子*(東京農大・院・林学),武生雅明,中村幸人(東京農大・地域環境)

ダケカンバは,陽樹だが寿命が長い,幹枝が柔軟,高い萌芽性をもつ,という特性を有し,亜高山帯の様々な立地に優占林を形成する.しかし,ダケカンバ林は針葉樹の2次林として成立する林分と積雪の影響を受けた土地的な林分が指摘されているのみで,その成立要因については十分に検討されていない.そこでダケカンバ林の成立要因を明らかにする事を目的とし,南アルプス北岳において種組成と林分構造について調査を行った.

結果,ダケカンバ林は4つの群集・群落に区分された.林床にハイマツを伴うハイマツ-ダケカンバ群落(Pp),広葉草原の種を多く伴うタカネノガリヤス-ダケカンバ群集(Cs),ヒロハカツラ林の種を多く含むミヤマハンノキ-ダケカンバ群落(Ac),針葉樹林の種をもち,ネコシデ等で区分されるネコシデ-ダケカンバ群集(Bc)である.ダケカンバの直径階分布は,Ac群落では一山型の分布を示し,その他の群集・群落では逆J字型の分布を示した.ダケカンバの幹の傾きはAc群落,Cs群集,Pp群落の風背側で大きかった.ダケカンバの萌芽率はCs群集で高かった.針葉樹の損傷はPp群落では梢頭折れが,Ac群落では幹の蛇行が多く見られた.

Cs群集は種組成とダケカンバの樹形,逆J字型の直径階分布から積雪の影響を受け成立した持続群落と考えられた.Pp群落の風背側は構造と樹形からCs群集と成立要因は同じであると考えられる.しかし,Pp群落の風衝側では,針葉樹の損傷の様子から,冬季に風衝害を受け生育が阻害され,ダケカンバが優占したと考えられた. Ac群落・Bc群集は構造から2次的に成立した林分と考えられる.Bc群集は既知の針葉樹の2次林であるが,Ac群落はヒロハカツラ林の要素を持ち,樹形も異なる事から,成因は異なると考えられた.


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